
歯医者さんの業界誌「月刊デンタルプレジデント」さんから、エッセイをひとつ書いてみませんかとのお誘いを受けまして、この「音話屋ダイアリー」番外編を掲載させていただくことになりました。 ネットでこのエッセイのバックナンバーをお読みになって、兼六館出版にお問い合わせ下さったそうで、大変光栄で嬉しく有り難いことだと思っています。 私の音の仕事に、歯の話や健康の話を絡めて書いて下さい、とのリクエストを頂きまして、舞台の作品の中で歯医者さんと言えば、有名なロックミュージカル「リトルショップ・オブ・ホラーズ」に登場する頭のイカレた歯科医、ドクター・バイオレンスでしょう。 ハーレーを乗り回し、歯科医の白衣の上に革ジャンを羽織り、いつもポケットに麻酔ガスを持ち歩いて、事ある度にガスを吸っては「このガス上物だぜ!」と叫び、暴れ回る、トンデモナイ歯医者さんです。 が、まさか歯医者さんの業界誌にエッセイを頼まれてこの作品とこのキャラを採り上げて、そのイカレ具合を綿々と書き綴ってもシャレになりません。自慢じゃありませんが私にだって親知らずもあれば虫歯もあります。エッセイが掲載された後で歯医者に行って、歯医者さんがドリルをキュインキュイン言わせながら この歯医者さんのドリルのキュインキュインという音、私がこの作品をお手伝いした時には、(私はメインの音響チーフではなくチーフに頼まれて効果音のお手伝いでした)実際の歯医者さんの器具の音を完パケで出すのをやめて、舞台裏で電気ドリルの音をカゲマイクで拾い、治療椅子の裏に仕込んだ大きめのスピーカから出す、という方法を採りました。 あとは、いわゆる客席向けメインスピーカから出さないで、治療しているところから聞こえてくる、という点です。大きめの会場だったので大きめの仕込みスピーカが必要になりましたが、それでも定位の効果というものが十分にあったと思います。 劇場中継と実際の公演の一番の違いは空間です。 大事なことは、「どのキッカケでどんな音を出すか」とだけ考えるのではなく、「どのキッカケで、どんな音を、どこから、どのように聴かせるか」だと思います。不思議なことに、昔ながらの音響さん、それもお芝居の音響さんはそうなさっているのですが、年を追う毎にそれがキチンと成されていない公演が増えてきている、ロックコンサートと変わらないようなミュージカルやお芝居が増えてきているというのはどうしたことでしょう。 こういう事を歯医者さんの業界誌に執筆してもしょうがないので、全然違うお話を書きました。 5月号に掲載されるということでしたので、寛大なお心をお持ちの方は、一冊お手に取って頂ければ、誠に感謝感激の極みでございます。 |