
世界中のあちこちに、自分の生まれ育った国を愛するが故の言葉、ジョーク、言い回しといったものが沢山あります。時にそれは他国を笑ったり揶揄したりするものに変化したりもしますが、それにいちいち目くじら立てていては却って笑われるだけでしょう。同じくらいのスパイスが効いた言葉やジョークをひねり出して言い返すくらいのセンスが求められます。 私は山ほど知ってる訳ではありませんが、海外で親しくなった劇場や劇団の友人、あるいは来日公演で知り合った人々から教わった、印象の強い、面白いものを幾つか御紹介しましょう。 「神はこの世を作ったが、オランダはオランダ人が作った。」お見事ですね。もともと干潟と海の底だった場所を、膨大な年月をかけて埋め立てて作った人口の土地、オランダ。ネーデルランドは「低い土地」という意味だそうです。 ドイツ語にオーストリア語が似ていると日本人は認識しがちですが、ホントは順序が逆。かつて歴史はハプスブルグ家を中心に回っていたという強烈なプライドがあり、その都ウィーンでは、ザッハトルテで有名なホテル・ザッハーと言うと、鼻で笑われて「それはドイツ弁。ザッハーではなくサヒャー。」 ヨーロッパでのハプスブルグに対するもう一方の雄、我こそヨーロッパの中心だと自負するフランスは、「フランスは文化を、イギリスは技術革命を、アメリカは民主主義を残した。ハプスブルグは何を残した?お菓子だけだ」 有史以来いつも政情不安定で、レコンキスタからこっち、王政、共和制、専制君主制、あらゆる形態をとってはひっくり返してきたスペイン人の言葉。 ロシア語のキリル文字を西ヨーロッパの人が笑って揶揄するのが、「活版印刷ができて、それをロシアが盗みに来た。活版をソリに乗せて雪の中を逃げて逃げて、雪に埋もれた木の切り株にソリがつまずいて活版が雪に散らばって、追っ手が迫ってるから上下左右メチャメチャに並べて詰めてまた走って、そのまま使ったのがあの文字だ。」ひどい言われようです。 そのロシア人は言葉について、 イタリア人には「マンジャーレ、カンターレ、アモーレ」という言葉があります。食べて、歌って、愛する。人生の幸福と美しさを讚え、そうして生きるイタリア人自身をも賛美する言葉ですが、ドイツ人は「あいつら飲んで歌って女口説いて、合間に戦争してるから負けるんだ」と口を揃えて言います。そして決まって、「だから次はイタリア抜きでやろうぜ。そうすりゃ勝てる。」日本人にはなかなかギョッとする言葉ですが、意外や意外、これはしょっちゅう言われます。第二次大戦の受け止め方の、日本人とドイツ人との違いなんでしょうか。 考えてみると日本にはこうした言葉やジョークが殆どありません。 日本人であるというだけで、尊敬されることもあれば、胸倉つかまれたりもします。それはどの国の人も同じです。シェークスピアが上演禁止の国だってあるんです。誰にでも好かれたいなんて無理だし、そんな姿勢は軽蔑されるだけです。 |