ヴァーチャルサウンドについて

音像移動を必要とするジャンルは、ざっと考えても3つの大きな柱があります。

1・舞台公演での音像移動
2・映画のサラウンド
3・アミューズメントや完パケのヴァーチャル・サウンド

これらは全く似て非なるもので、それぞれ求められるものが違います。

舞台公演での音像移動は、奥行きのある、リアルな生の空間と客席を同化させるためのものです。舞台上の奥行きと客席の奥行きを融合させることが必要です。

映画のサラウンドは、平面であるスクリーンの映像にリアリティを持たせるためのものです。例えそれが非現実の世界であっても、その世界の中の音にその世界なりのリアリティを持たせ、完結させることによって、観客は平面のスクリーンの中に感情移入することが出来るのです。

完パケのヴァーチャルサウンドの立脚点は、人間の「感覚の記憶」です。

ですからその眼目は「空気感」と「音の肌触り」です。

ただ音が移動し、移動する音にエフェクトがかかっていても、その音に空気感や肌触りが感じられなければ、その音を聞いた人は、実際にその音を聞いた、もしくはその音を想像した時の、聴覚を含めた感覚の記憶を刺激されず、ヴァーチャルサウンドの体を成さないのです。

これらヴァーチャルサウンドを含んだ音像移動に大事なものは演出です。

演出なしに音を移動させても、音を聞いた人はその一瞬だけ「音が移動している」ことそのものに驚きを感じますが、すぐに聴覚が慣れてしまい、心が動かされることはありません。

まず始めに「何故この音をここに定位させ、なぜこのように移動させるのか」「そこにどんな芝居心、どんな演出があるのか」がなければ音像移動は、ただのこけおどしにもなりませんし、RSSは技術的性能を発揮することは出来ても、本来の存在理由を誇示することが出来ません。

「演出家と、エンジニアと、RSS」

この三位一体が不可欠なのです。

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